なんというかな、人間って「それ自体」を楽しめるようにはなかなかできてないのか、たとえば「芸術」を楽しむという時、目の前にある作品をそれ自体で楽しんでいるというより、作品を楽しんでいる自分を楽しんでいる、そのような自分イメージを手に入れて楽しんでいる、ようなところがありはしないか、読書でも映画でもヨガでもなんでもいいけども、と思ったけれど、こういうのは、だいぶ昔の誰かが言っていたような気がする。30年くらい前の。ボードリヤールとか。あまりよくは知らない。とはいえ、身体的なものになればなるほど、「それ自体」を楽しむのが簡単になるとは思う。100%の純度で「それ自体」を楽しむのはかなり難しいと思われるので、そもそもそれが可能かどうかもわからないけれども、なにを楽しむにしても「それ自体」と「それを楽しむ自分イメージ」とを、その時々の割合でもって楽しんでいるのが、今の私たちなんだろう。